マンデルブログ

主にPythonのことを書いていきます。

OISTを受験するまでの流れとやったこと。OISTに入学するメリット・デメリット。

沖縄にある謎の金持ち大学院大学・OIST。
なんと学生全員に月20万円の経済支援があるとか、ないとか。。。
日本で院進学した、もしくは院進学を考えている人は一度はOISTについて聞いたことがあるんじゃないでしょうか?そんなことはないか。

最近良くも悪くも話題になったOISTですが、まだまだ日本人の学生が少ないのが実情です。
この間参加したAdmissions Workshopでは、日本人の受験生・学生の間でOISTの受験に関する情報は手に入りにくいよねと話していました。
そこでこれからOISTを受験したいと思っている人に向けて、僕なりに情報をまとめようと思います。

OIST情報の先輩たち

情報が少ないといってもこれまでOISTを受験した方、もしくはインターンに行った方などがブログなどで体験をまとめてくれています。
特にすだちさんの情報はわかりやすく丁寧にまとめられていておすすめです。

業務インターン

研究のインターンとは違うようですが、こういうブログもありました。
http://www.it-frogs.jp/m/?p=1203www.it-frogs.jp

OISTとは?

沖縄科学技術大学院大学

www8.cao.go.jp

沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、沖縄において世界最高水準の教育研究を行うことにより、
1)沖縄の振興と自立的発展、2)世界の科学技術の発展に資することを目的として設置された大学院大学です。

ざっくり書くとOISTは”沖縄の発展&世界トップレベルの研究”を目標とした内閣府直轄の私立大学です。予算も文科省からではなく沖縄振興関連予算(参考文献 https://www8.cao.go.jp/okinawa/3/2019/h31_gaisanyoukyu.pdf)から出ています。


授業及び研究はすべて英語で行われ、教員の70%、研究員の50%、学生の80%が外国人という多国籍な環境です(2011年のデータより)。
教育は5年一貫性で、1年目はラボローテーションと言って3つのラボ(そのうち1つは自分の分野外)を回りながら研究するという独自のカリキュラムを持っています。

OISTでの学生支援

OISTは学生へのサポートがかなり充実しています。(授業料+生活費)として年300万程度の返済不要奨学金がもらえます。つまりお給料が出ます。
他にも魅力的なサポートがたくさんありますが、これはOISTのAdmissionのページをよんだほうがわかりやすいです。

OISTのメリット・デメリット

さて、こんなにも魅力的なサポートをしてくれるOISTですが、日本人の学生は多くありません。僕の考えですが、我々日本人にとってはOISTに入学するのにデメリットもしくは障壁があると思うんです。

絶対的なメリット
  • 充実した経済支援&学生サポート。
  • 最新の機材・世界トップクラスの教授陣使い放題等々。

これはOISTのホームページや先輩方のブログを読むと十分に伝わると思います。

日本人にとっての考えられるデメリット・障壁
  • 英語の壁

前述しましたがOISTの研究生活は基本英語です。論文などで英語の読み書きに慣れていたとしても日本語で大学教育を受けた人にとって、いきなり英語だけの世界に飛び込むのはかなり大きな壁だと思います。まあ、OISTは日本にあるので海外の院よりはハードルは低いと思います。
しかも英語が不安な学生(僕みたいな)には入学前に海外に語学研修に行かせてくれたり(これは最近からなくなったようです)、OIST内での英語のクラスがあったりと、語学面でのサポートは手厚いです。学生に聞いた限り「入ったら大抵なんとかなる。少なくとも英語ができなくてどうにもならない人はいない」とのこと。

OISTは5年一貫性です。修士号をとって就職するということは基本的にできません*1。日本では修士をとって就職って人が多いと思うんですが、そういう人にとってはOISTは進学先の候補から外れることになります。
まぁ最初から博士取るつもりの人にとっては全く問題ないですよね。ちなみに修士号を持ってたら修了に必要な単位が減って3〜4年で卒業できる(かもしれない)そうです。

人によるデメリット
  • 沖縄の田舎にある

もちろん多くの人にとっては強烈なメリットになりえます。
沖縄の暖かい気候、綺麗な海、豊かな自然が大好きな人にとっては最高のはず。
しかし、沖縄...
くっっっっっっそ暑いぞ
Lab内はもちろんクーラーガンガンですが、外はとにかく日差しがきついです。夏(梅雨明け〜10月まで)は外を出歩かないことをおすすめします。
また湿度もめっちゃ高いです。除湿機をフル稼働させないと部屋中カビだらけになります。必ず除湿機買いましょう!

またOISTがある場所は沖縄の中でも結構田舎です。最寄りのコンビニまで結構歩きますし、車がないと大変です*2。電車に乗れるような都会に住んでる人にとってはかなり不便に感じると思います。
(OISTの近くにはご飯を入手できるところがほぼないので、ゲストやインターン生など自炊できない人はOIST内のレストランやジミーが閉まると夕飯難民になるそうです。)

学生にあまり関係ないかもしれないデメリット

あんまり書かないほうが良いかとも思いますが、、、

  • 近い将来にどうなるのか不透明

OISTについている潤沢な予算ですが、実は2021年から先は同じように予算がつくかは決まっていません。某務省から改善を求められているように外部資金の獲得や産学連携などで、沖縄に寄与しているのか、研究成果が出ているのかという点で十分でないとされると(どこまで行けば十分なのかはわからないが)今までのように潤沢な予算はつかなくなる可能性もあります。まあすぐに取り潰されるというようなことはないと思いますし、学生への支援が打ち切られるということもないと思います(減るかもはしれない)

詳しくは以下を参照
https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/201709/201709j.htmlwww.mof.go.jp

いろいろニュースになって知っていると思いますが、メールの返信者数が少ない(OISTがフィッシングメールかもしれないから開かないように通知したせいもある)、他の大学ではこのような調査自体あまりされていない等、OISTにだけパワハラが蔓延しているとは言い切れない部分もあります。しかし、ダイバー死亡事故の外部有識者委員会が事故の原因としてハラスメントに言及したということもありました。
www.okinawatimes.co.jp

パワハラ問題について学生やスタッフの人に聞いてみると「報道されたことくらいしか情報はないけど、学生はがっしり守られてるからそんなに影響はないと思う」ということでした。
なんかまだニュースになっていない部分も多い気がしていて、知ったかぶりしてあまり言及しないほうが良いのかもしれません。多国籍な人たちが一緒に働くと(働き方や働くことに関する考え方も違うだろうし)いろんな摩擦が起きても不思議じゃないのかもしれません。でも問題はOISTがこのあとどういう対応をするのかですよね。
OISTで働いているスタッフの方々は基本的にみんな英語も話せるし優秀だから、優秀な人から東京のベンチャー企業なんかに高給で引き抜かれていくなんて話もきいたことがあります(本当かどうかはわからない)。

僕が受験するまでにやったこと

前書きが長くなりましたが、ここから僕がOISTの受験に至るまで何があったのか、何をしたのかという点について書いていきます。
まず最初に書いておきますが、僕はかなりのレアケースだと思います。かといってすだちさんが普通かと言うとあの人もだいぶレアケースだと思う。だってB2でファースト持ってるんだよ???
でもレアケースの人しか合格できないわけではないです(N=2なので)。てか、あなたもインターンとかガンガンきてレアケースになればいいじゃない。

OISTを受験するまで

話は僕が大学3年次のときまで遡ります。
OISTで新しく量子情報分野の実験室を立ち上げたKさん(研究員でPIではない)が、立ち上げを手伝ってくれるアルバイトを探していました。もともと同じ学科の4年次の先輩がインターンすることが決まっていたのですが、夏休みはどうしても院試等で忙しくなるので3年次以下の学生で誰か興味がある人は連絡をしてほしいということでした。単純にアルバイトとして興味があったので連絡してみると、トントンと話は進み夏休みの間、OISTで働くことになりました。その時は量子情報に一切興味もなくて、お金欲しさで働いていました。
そして、夏休み終了と同時にバイトも終了。

4年次になると今度は僕が院試のため、その年の夏休みは働けず。しかし、冬休みと春休みの間に声をかけていただき、ちょこちょことバイトしていました。
大学院に入るとKさんから週一くらいでOISTに来て働いてくれないかという打診を受けます。僕の研究分野は理論系で、特に拘束時間があるわけではなかったので不可能ではありません。指導教員の先生も「お金は大事だよね」と言ってすぐに許可をくれました。(もともと学生にああしろこうしろと言うような先生ではなかった。めっちゃ優しい。一回、先生って怒ることあるんですかと聞いたら「サンエーでレジに並んでるときに横入りされたりしたら流石に怒るよ」といっていた。)
そうしてM1から週に1回のパートタイマーとしてOIST職員になりました。でもまだOISTを受験する気はありませんでした。

このとき僕がOISTを受験しない理由としてあったのは次のようなものです。

1. 英語話せねぇ
英語は高校のときから苦手でした。英語に関する資格で持ってるのは中2のときに取った英検4級くらい。

2. 博士取ったとして食っていけるのか?
これはみんな悩むよね。

3. そもそもOISTに社会物理学やってる研究室がない!
そりゃないよ。

しかし、なぜか働いているうちに段々と考え方が変化していきます。(Kさんに洗脳されてたかも)


1. 英語→てか話せるようになれば良いのでは?
OIST職員になったので職員用の英語クラスに通えるようになった。

2. 食えるか→博士とっても別にアカデミアの世界に残る必要はないのでは?
OISTはスタートアップ支援なんかもしてて、Ph.D.の成果次第ではスタートアップ立ち上げられるかも*3。(考えがちょー甘い。同じユニットでインターンしてた4年次の先輩も博士(県外)行きながらスタートアップ企業の社長してたりするから必ずしも不可能ではなさそう。)

3. 分野→分野変えて量子情報やればいいのでは?
OIST自体が分野変えたりすることを推奨している感じがある。バイトしてるユニットで研究がしたくなってきた。

人生なんとかなるっしょ!的な感じでOISTを受験する意志が固まっていきます。

OISTに受験するためにやったこと。

ここはすだちさんのブログがおすすめです。参考にしてください。

OISTの受験はざっくり2段階。書類選考→AWSAWSについては前回書いてるので省略します。

準備する書類たち

すだちさんのブログから引用。

推薦書 (書式自由)・志望動機 (400wordsで科学的な興味と入学してしたいことの作文)・TOEFL・成績・GRE

  • 推薦書

すだちさん曰く推薦書めっちゃ大事です。僕は自分の指導教員、Kさん、たまたま1対1で授業を受けていたドイツ帰りの先生に推薦書をお願いしました。書式を含め推薦書の内容は受験者は知ってはいけないことになっています。僕は推薦書を書いて頂く前に、志望動機やOISTでしたいこと等細かい点も含めてそれぞれの先生にお話しました。

  • 志望動機

何をどう書いて良いのかわからなかったので苦労しました。最終的には
科学的興味:今やってる研究→OISTでしたい研究
OISTで習得したいこと:バックグラウンドや将来の野望から書いてOISTで身につけたいことにつなげる、
というように書きました。最初は日本語ベースで書いて、一度指導教員に見てもらいました。英語に直す際はまずは自力で書いたあと、Kさんに読んでもらってこういう単語やフレーズを使うとよいなどのアドバイスをもらいました。最終的には英語クラスのネイティブの先生におかしい部分はないかチェックをもらいました。

選考に全く関係ないことは確かなので(入学後の英語のクラス決めに使うらしい)全く対策無しで受けました。たぶんOIST受験生史上最低点だと思います。スピーキング1桁でした。
IELTSのスコアでも大丈夫です。沖縄ではTOEFLしか受けれなかったのでTOEFLを受けました。

  • 成績

大学の事務に申請したらもらえます。英語の成績証明書等は時間がかかるはずので余裕を持って申請しましょう。

なにそれ

  • 履歴書

なくても良いようですが、英語の履歴書を書いて、これまで行った学会や論文等をアピールする手もあります。
僕の場合、論文を提出していたものの掲載決定が出たのが締め切りあとだったので履歴書にはかけませんでした。したがって、志願書に「この内容は論文にまとめて投稿しました」と書くにとどめました。


OISTは受験料無料です。僕の場合、各書類を揃えるために使ったお金として
パスポート(10年):16000円(5年なら9000円だったはず?)
TOEFL受験料:約27000円(大学が受験料補助をしていて2万帰ってきた、やったー)
英語の各種証明書:合わせて1000円
合計44000円(24000円)かかりました。まあパスポートとTOEFL(IELTS)のスコアをすでに持っていたらほんとにタダで受験できますね。

いろいろ思ったこと

OISTのすごい潤沢な予算がいろいろ話題になっていますね。僕がちょこっとOIST内で働いている中で思ったのは、もちろん予算があるのもすごいんですが、その予算を使って優秀な秘書さんやポスドク、テクニシャンなどなど、研究に関するスタッフをガンガン雇えるところがOISTの一番の強みだと思います。(まあ地方国立大からみたらなんですが、、、)


OISTって沖縄県出身の学生がほんとに少ないんですよね。いま現役なのは2名とかのはずです。だからかOIST内の知り合いにOIST受験するよーとか、AWSで沖縄出身ですぜーというとすごい応援されました。沖縄のために作られてるのに沖縄県民が少ないってOISTの中である程度問題意識があるのかもしれません。(だからといって入りやすいとかはないと思う)


合格が決まってみんなに報告したりブログ書いたりしてますが、まだ受かった実感はあまりありません。
OISTの学生の中には、あまりに支援が手厚いため自分が特別な存在なんだって勘違いする人もいるらしいです。
僕は受かったと言っても、これからめっちゃ勉強するっていう前提で選ばれたと思っています。スタートラインに立つのを許されたというか。
これからが勝負。がんばります。

*1:実は2年生の終わりに博士号取得に向けての研究をしていいか口頭試問があります。これで落ちると(落ちる人がいるのかはわからない)修士号がもらえて追い出されます。

*2:OISTのシャトルバスを使えば10分〜15分くらいでサンエーまで行けるぞ

*3:もちろんOISTの学生(受験生も含めて)がみんなスタートアップを目指しているわけではない